福寿草
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27 春。お花見も心なごみ楽しいですが、それ以上にワラビ狩りが好きです。 小学二年の時、大阪から母の実家に疎開しましたが、祖父の家も農地改革で田畑がなくなっていました。春になると母は私が学校から帰るのを待ちかまえて遠い山へ。私は四人きょうだいの末っ子、母も一人では寂しかったのでしょう、この時ばかりは私と二人切りでおしゃべりしながらのワラビ狩りです。 いつの間にか私も山歩きの楽しさが身についてしまい、今も「山が呼んでいる」なんて心うきうきしながら、夫の休日が来るのを待ちわびて、山へ連れて行ってもらいます。大自然の中で、日常の雑事を忘れひたすらワラビを探す至福のひととき。 ウグイスがまだ上手ではない声で「ホーホケキョ」と鳴いています。手作りのオニギリを食べていると、「健康に良い遊びだろう」という母の声が春風に乗って聞こえてきそうです。 今春も大自然に感謝しながら、何度ワラビ狩りに行けるかな。ワラビご飯をつくるたび、やさしかった母を思い出しています。掲載日:2005年(H17)5月9日「ちまたの風」・68歳母とワラビ

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