福寿草
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35 長い間夢みていた四国八十八カ所霊場めぐりに参加するにあたり、一カ所だけ気になる所があったので、思い切って病院へ行った。 軽い手術をしたのだが、その前日、病院で初めて夫にラブレターを書いた。お見合いして、すこし交際しただけで結婚したので手紙を書いたことがない。最初で最後のラブレターだ。 「四十四年間ありがとうございました」で始まり、思い切り甘い言葉を使った。今読み返しても、思わず笑えるような文章だ。そしてエンディングメモのように「もしあちらの世界に行ったら」と、お願いごとを書いた。 ちまたの本や山陽新聞に掲載された記事の切り抜き帳、納経帳、つえなどをお棺にいれてほしいと。それから通夜はわが家で行い、皆さまに迷惑かけないよう家族だけで、とも…。 最後に「ちまた友の会」主催の講演会で徳永進医師のお話を思い出し「長い間ありがとう。ごめんネ。愛してます。お先にさようなら。初めて書いたラブレター!」との言葉を入れた。でも封筒に赤ペンで、私が天国に旅立ったら読んでくださいと記したので、夫は今も読んでいない。掲載日:2006年(H18)6月13日「泉」・69歳初めてのラブレター

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