福寿草
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52 お彼岸が近うなったけえ、実家の墓掃除に夫と行ったんじゃ。お墓は山のふもとにあるけえ、盆にきれえに掃除したのに、ぼっけえ落ち葉がおっとったんじゃ。 きれえに掃除して母の好物のリンゴ・お菓子・お茶などお供えして「慈顕院妙温日操大姉さま」と母を呼び、語りかけたんじゃ。お母さん、天国で五十年前に先ぃいった父上と会うて「戦争で怖え目に遭うたんよ」とか「疎開して預金封鎖があり、お父さんが残してくれたもの全部のうして貧乏し、苦労して四人の子を育てたんじゃ」とか積もる話、もう済んだかなあ。 私ゃあ、夫と二人仲よう暮らしとるけん。娘もええ婿と結婚して幸せにしとるけえ、心配せんでええで。私ゃあ、夫と四国遍路二回目回って、先祖供養しとるで。夫が病気にでもなったらここまで来れんけえ、よう守ってんなあ。 十三年前に別れたお母さん、かなわぬ願いじゃけえど、もう一度お母さんのオスシ食べてえなあ!掲載日:2008年(H20)9月20日「ちまた 方言ばあじゃ」・71歳食べてえなあ亡母のオスシ

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