mukashi2
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18 正月の年取り──三 昔は、数え年といって正月が来るたびに一つずつ年を取っていたのじゃな。 年は、正月の神様が、誰にも配ってくださる。その年を配る神様は、それぞれ配る村が決まっていたのじゃ。 ある年の暮れ、一人のけちな男が、「わしはもう五十を過ぎた。正月が来ると、また一つ年を取らねばならん。もうこれ以上年を取りたくないのう」と、ひとり言を言いながら、何かよい方法はないかと考えておった。「正月の神様が年を配って来るのじゃから、神様に見つからんように隠れておれば年を取らんでもすむはずじゃ」 男はこれこそ妙案だと、ほくそ笑んだ。「神様に見つからないように、どこに隠れるかじゃ。家の中では押し入れでも倉でもだめじゃろう。お寺やお宮も神様がおられるし、山の中は山の神様、川には水の神様がいる。どこに隠れても神様がいてすぐ分かってしまうぞ」

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