mukashi2
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19 いろいろ考えていたが、「そうじゃ。よいところがあったぞ」と、男は手をたたいた。「村のごみ捨て場なら、神様も来ないじゃろうし、よもやこんなところに隠れているとは思わんだろう」 大晦日の夕方、男は村のごみ捨て場に出かけて行った。大きな穴があって、そこにごみが投げ捨ててある。見ると、穴の横に、どうにか雨露がしのげるくらいの洞ほらがあった。「ここじゃ、ここなら大丈夫じゃ」 男は、そこに隠れたと。 その男の村にも、正月の神様がやって来て、家々を訪ね、みんなに年を配って歩いた。ちょうど郵便配達の人が年賀状を配っていくようにじゃ。ところが、その神様は足が少し遅かったので、一番鶏どりが鳴いたときには、まだたくさんの年が残っていたのじゃ。あわてた神様は、「こりゃ間に合わんぞ」と走って年を配っていったが、すぐに二番鶏も鳴いた。「こりゃ、もうすぐ夜が明けるぞ。三番鶏が鳴く前にゃ帰らにゃならん。まだ村はずれの家も残っているし、全部はとうてい配れんぞ」 神様は困ってしまった。

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