tsukiyo
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7出会った、あいつは?「草の下だ。土がほれているところ。ほら、いるだろ、大きいやつが。そおっとねらって、さっとうつんだ」 ゆうきは、何なんかい回もなんかいもしっぱいを重ねて、やっと大きな魚をつきさした。「やったあ」 ゆうきは、おどりあがった。「へへへっ、やっと、とれたか」 その子は笑わらいながら近づいてきた。顔かおにかかったぼさぼさ髪がみから、きらり、大きな金色の目が光った。緑みどりいろ色の細い指で、水中銃から魚をはずすと、笹ささにさして、腰につけてくれた。 川の水は、すきとおってきれい。ゴボゴボと流れる。むれをつくって泳およいでいる魚の美しいこと。腹はらが銀ぎん色いろに光る。川かわぞこ底には、ちょろちょろとすばしっこく動く、いろんな生き物がいた。ゆうきは夢むちゅう中で、ぬるぬるとした石の上を、魚をおって走りまわった。やさしく包つつむせせらぎが、体の中を流れていくようだ。心ここち地よい幸せな時がすぎていった。 ふっと、川の水がくらくなった。あせばんだ背せなか中をさっとつめたい夕風が押おした。「おおい」 ふりかえると、あの子がいない。あわてて足元に目をやると、そこはいつも見慣なれた、コンクリートの浅あさいどぶ川だった。(あれっ) 腰に手をやると、ずっしりと魚がぶらさがっていた。

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